月経の名称

 世界の言語で、月と月経をしめす言葉は同じで、そうでない言語でも語源が同じで、関係があり同類です。月経は「月(のもの)」といわれ、元来「暦の月」でもありました。

 

ラテン語で月と月経の経過はどちらも日にちの測定を可能にし、時間の計算が出来るようになることから、mensura「測定」は共通の概念を表します。

 

「月経」と「暦」をさすゲール語は実質的に同じmioachとmiosachanです。

 

中米のマヤ語族は、「自分たちの大暦は女性の月経周期と月の周期を結びつけることからはじまった」と言っています。

 

ポーランドでは、月、暦の月、月経にはまったく同じ言葉がつかわれ、

ドイツ語ではMondが月、Monatは暦の月、Mensが月経になります。

 

フランス語では、月経は le moment de la lune(月の時期)とも言います。

 

コンゴ共和国、トレス海峡地方、インド、西スーダン、その他多くの土地で月と月経に同じ言葉(ngonde)が使われます。

 

アリストテレス(前384年 - 前322年3月7日古代ギリシアの哲学者)は、相あるいは周期の測定点を意味する「月の時期」に言及していました。

 英語では何というでしょうか?辞書では「menstruation」と出ますし「メンス」という言葉は聞いたことがある人もいるかもしれません。ただこれは少し硬い言い方なため「period(ピリオド)」のほうが日常的です。対訳すると「月経=メンス」「生理=ピリオド」といったところでしょうか。

 ピリオドは、ギリシャ語の「peri-hodos」に由来します。「ぐるりと回る」を意味し、そこから巡回、周期という意味をもちます。そこには、古代に月をさしていた名残が感じられます。

 

 

 日本では古来神秘的なものとされ宗教的意味付けにより理解されていました。『古事記』ではヤマトタケルノミコトが東国征討の帰路ミヤズヒメを契りを交わそうとした際、衣の裾に血がついていったん中断するもミヤズヒメの待ちわびていた結果であるという歌を受け容れ、二人は結ばれるという伝承があります。

 

「さ寝むと吾は思へど汝(な)が著(け)せる襲(おすひ)の裾に月立ちにけり」

「月は来経行く諾(うべ)な諾な君待ちがたに我が著せる襲の裾に月立たなむよ」

 

のちにこれは「服の裾に“月の障りのもの”がついている」と解説されますが、月経のことを神秘的な月にたとえた歌は、次第に「さわり」「穢れ」と表現されてきます。

 

日本で忌み嫌われる不浄なものとして「赤不浄・白不浄・黒不浄」と表現されるものがあります。黒は「死穢」、白は出産を意味する「産穢」、そして赤は月経の「血穢」です。

『日本民族大辞典』によると、月経や出産といった女性特有の出血は穢れたものとし、赤不浄(アカフジョウ)、血忌(チイミ)、産火(サンビ)、白不浄(シラフジョウ)といわれ危険視されていました。

『蜻蛉日記』では月経について「不浄のこと」「慎むべきこと」と表現されています。

 

その他、世界各地で古代人により「月と月経」は似通ったかたちで関連付けられたり忌み嫌われ、ネガティブなイメージにされてしまいました。

 

 

月経

暦の月

支払・在職期間

月経血

測定

ギリシア語

mene

katamenia

 

 

 

 

ラテン語

mense

menses

mensis

menstruum

menstrua

Mensural

ゲール語

 

mioach

miosachan

 

 

 

*ゲール語・・・アイルランド共和国の第一公用語。2007年以降欧州連合の公用語の一つ

*ラテン語・・・古代ローマ共和国の公用語として広く普及した古代言語

 

世界各地で月に与えられた称号は下表のとおりです。

地 方

称号もしくは呼称

北米先住民族(インディアン)

「植物の母」「トウモロコシの母」

ブラジル地方

「牧草の母」

インド地方

「植物の主人」

エジプト・メソポタミア

「家畜の主人」

 

 

月経から派生したことば

 月経について語ることがタブーという認識が全世界的にひろがっていますが、そもそもタブーという言葉の語源も、アメリカンインディアンの言語「tabu」であり、さらにその由来となる「tupua」は、ポリネシア人の言葉で月経を意味するというルーツがあります。