女性のライフデザインとピル
10代
初潮を迎えて数年は、月経が不規則でも必ずしも異常であることはありません。定期的な排卵周期が確立するには約20周期、つまり初潮から2年以上経過すればほぼ月経周期は一定していると考えられます。この時期に多くみられる機能性の月経困難症は、子宮が未熟であることやホルモンの変動によって起こるため、ピルが有効です。
特にトラブルがなくても、いつ来るか分からない生理に不便さを感じれば、低用量ピルでのリズム調整を検討してもよいでしょう。
部活の大会や受験に生理がハンデとなるのはその後の人生にも響きますし、日常の学校行事にも邪魔されないことは学校生活の充実にもつながります。アメリカでは思春期の女性にも積極的なピルの使用が推奨されています。ACOG(米国産婦人科医会)は「思春期情勢におけるOC使用の禁忌はまれである」としています。
20~30代
排卵と月経の周期は確立されて、最もホルモンの安定している年齢層ではありますが、社会的要因によるストレスで生理不順になることもある年代です。
生理痛が少しでもあったり月経トラブルがあれば医療機関にかかって保険のLEP剤ですが、避妊ピルは自由診療のため、月経リズム調整や将来健康な卵巣を保つためのケアとして応用することもできます。
妊娠希望しない時は確実な避妊、欲しい時には良い状態を保った卵巣で妊娠に臨む「将来産むための避妊薬」、或は潜在するかもしれない子宮内膜症の進展予防というセルフメディケーションを、ライフェスデザイン研究所では推奨しています。
40代
ホルモンが全体的に低下してくる年代です。若い頃は多少のストレスがあっても規則正しく来ていた生理も月経周期が短くなったり出血が長引いたり周期にバラつきが生じることがあります。ホルモンが不安定になることによってPMS症状も強くなったりプレ更年期症状も現れやすくなります。
この時期の「プレ更年期」に対しては、閉経期の更年期治療で使用するホルモン補充療法では量が少なすぎるため、低用量ピルが症状改善に効果があります。
40代の低用量ピル服用を禁忌とする方針(その場合はミニピルやミレーナを利用など)の医療機関もありますが、閉経まで服用OKという医師もいます。信頼できるパートナードクターの指導を受けながら、自分のライフスタイルに合わせて快適に過ごしましょう。
特にエストロゲン低下によるドライシンドロームのひとつドライマウスをはじめ、45歳以上の女性に多い扁平苔癬、舌痛症といった口腔ケアへの関心をもち、医科と歯科を連携させた閉経準備をプランニングする必要があります。
50代
更年期の急激な女性ホルモン低下により自律神経がバランスを崩し、暑くないのにのぼせたり、手足が冷えているのに体や頭がほてることがあります。これを「ホットフラッシュ」といいます。50代は、このホットフラッシュや不眠、抑うつなどの更年期症状がみられます。閉経前の40代から閉経までは低用量ピル服用で予防や軽減はできます。
ピルを続けているといつ閉経になったか分からないので、50歳前後で数週間ピルを中止し、血中FSH値が高値(≧30mIU/mL)となればほぼ閉経とみなすことができ、HRTに切り替えることができます。
月経の間隔が空いたり既に月経がなくなっている場合は、心臓血管系の異常など生活習慣病が潜在している可能性が高くなるため、低用量ピルよりホルモン補充療法=HRTや漢方が適しています。
閉経すると完全にエストロゲン分泌がなくなるため、前述のドライシンドロームへの対策も知っておくとよいです。ドライシンドロームにはドライスキン、ドライアイ、ドライマウス、ドライバジャイナなどがあります。
妊孕性って知ってる?
「ニンヨウセイ」と読み、妊娠しやすさを意味します。妊孕性は10代から20代にかけて高くなります。
妊孕性が低下したり失ったりする原因にガンや膠原病の治療があることからガン治療の場でみかけることが多い言葉ですが、特に病気などしなくても、20代から30代にかけて年齢と共に低下していきます。
生理現象としての月経は50歳前後までありますが、生理さえあれば、年齢にかかわらず皆同じように妊娠するチカラを兼ね備えているわけではないのです。
上記の図のように、女性ホルモンが活発なのは月経のある期間ですが、妊孕性を考慮すると20代で出産するのが理想的です。
出産時期を30代以降に希望している場合は、卵巣の状態を悪くしないなど、若いうちからのケアが必要です。「生理痛がない」「出血過多でない」「定期的に順調な周期」といった、健康な生理を保つ心がけをし、少しでも異常が見られる場合は放置せず、早めに検査など受けましょう。